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撮影裏話/卯/その1 [卯]

化粧、髪のセットは車内で済ませ、いざ海岸へ。青空の下、白い波頭が目にまぶしい。波は想像していたより穏やかで、高さもほとんどない。波の向こうには小島が見える。頂上には小さな赤い鳥居。

「じゃ、あの島を兎のいた島だと思って、この海岸に来たい兎が、とりあえず無事についた姿を想像して喜んでいる。。。。ところを想像してポーズッ」

波頭の白と白兎の白が重なってちょうどいい感じである。空気の透明感も申し分ない。
しかし、さすが見晴らしがいいだけに、結構風がある。
薄衣が、髪が画面の中で落ち着かない。
ようやく風がおさまるかと思うと、モデルのポーズが決まらない。

「寒いんですけど〜」

寒風ふきっさらしの中で、初めはすこし遠慮深げに。。しかしだんだん積極的にモデルの目がつりあがってくる。近づくと小刻みにぷるぷると震えているではないか。
確かに。寅年の衣装の方がまだ温かかったかも知れない。(いえ、全然ましでしたっ!
まだ肩に布があったしっ!!! byモデル)

「赤むけにされたウサギはもっと寒かったと思うよ、がんばれっ」

羽毛入りダウンジャケットを着込んだカメラマンは、そういって励ますのであった。

さんざん寒い思いをして(モデルだけねっ byモデル)撮った写真であったが、現像した結果、再度撮影に行くことになってしまった。立ち位置の周りの砂の足跡がいやに目立つのと、ドレスの裾が風でふくれあがってしまっているのが気に入らなかったからである。


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