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町家の白蛇 [巳]

衣装製作のアトリエとして、京都に7年間町家を借りていた。小さいながらも千本格子に虫籠窓(むしこまど)、漆喰の壁の町家だった。そこではお手洗いが部屋の廊下続きの外にあった。ある日のこと、お手洗いにたったスタッフが、息をつめてぬき足さし足しのび足で、部屋に戻ってきた。「シロヘビ、シロヘビがいる、樋のところ、ひなたぼっこしてる」漫画なら点々のふきだしで表現しそうな声で報告する。「シロヘビ?ほんと?」
なんといってもシロヘビは吉兆である。さっそく拝まんものと、そろそろと移動する。

いた。白い小さな頭が茶色のプラスチックの樋から5センチ程出ている。察するに胴体は樋に添っているのだろう。とても天気の良い日で、私たちの視線に気づく風もなく、生きているのか死んでいるのか、まばたきのない黒い瞳を中にうかせたまま動かない。
「可愛いねえ」大のヘビ嫌いのスタッフもゲンキンなもので、シロヘビとなるとありがた味を幾分感じるらしい。私はもともとヘビ擁護派なので、近づいてみたかったが、もしかして毒持ちかも知れないと思い、ありがたく拝むだけにとどめ、お昼寝の邪魔はしなかった。
PIM0012.jpg

その辺りの古い町家ではいまでもヘビはよく見かけられるらしい。
「そらあんた、シロヘビちゃうで、アオダイショウや」
近所のおじさんが教えてくれた。
私たちの見たヘビはアオダイショウといって人家近くに生息する本土で最も良く見られる種だそうだ。古い家や倉などでは、人の食物を荒らすネズミを食べるというので、家の守り神ともされてきたらしい。アオダイショウは名前の響きから青系のヘビを連想するが、黄色、褐色がかったのもいるとのこと。よく「シロヘビ」といわれるのは、このアオダイショウの薄い褐色系のものらしい。

ありがたいシロヘビ様と思ったのが、ありふれたアオダイショウだと言われて、私たちは一瞬がっくりきた。しかし、そこであきらめてはいけない。ご利益を得るためには探究心を鈍らせてはいけないのである。調べた結果、岩国の有名なシロヘビなどはこのアオダイショウのアルビノ種だということである。ということは、私たちが見たヘビも、貴重なアルビノ種だったのに違いない。そう、あのヘビはまさしくシロヘビさまだったのだ。

ちなみにアオダイショウには縦の4本の筋があるらしい(ないものもいる)。しかし、幼ヘビのには横シマがあって、一瞬毒性の強いマムシに見えるのだが、アオダイショウの目はまんまる、マムシの目は縦長の猫目なので、区別は簡単らしい。けれども、ヘビを発見した瞬間に、そこまで見分けられる心の余裕のある人は。。。少ないだろうなあ。。。。。
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