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いけずき、するすみ [午]

また小学時代の話に戻るが、「平家物語」に登場する源頼朝所有のいけずき(生食)、するすみ(磨墨)。物語自体は忘れたが、荒武者で有名な坂東武者さえ乗りこなせないこの2頭の名馬の名前だけが妙に記憶に残っている。並みいる武将が名を連ねる中で、特別に名前のついた馬がよほどめずらしかったのだろうか。または、私は関西出身なので、なんとなく源氏よりは平家びいきなので、その敵方の荒くれの坂東武者たちが乗りこなせないという奔放な2頭に爽快感を抱いていたのかも知れない。先日偶然に鎌倉の鶴岡八幡宮に行ったところ、いけずき、するすみの銘のついた、黒と褐色のペアの硯が宝物館に展示してあった。銘入りの硯がつくられるなんて、いけずき、するすみは武士に負けず劣らぬ、いや、遥かに格の高い存在だったのだろう。

余談であるが、鶴岡八幡宮の境内に源平池がある。正面の鳥居をくぐって左右にある池である。左が平家池で右が源氏池らしい。鶴岡八幡宮の境内だから、右の源氏池の方がかなり広い。中央には弁財天を祭った祠のある小島もある。比べて平家池の小さいこと。平家びいきの私はなんだか釈然としないが、この平家池は神奈川県近代美術館に面している。武家文化よりは貴族文化にイメージのつよい平家には、美術館に面するという文化的な立地がふさわしいかもしれないと納得することにした。

平家物語で馬の登場する話として、源氏の武将畠山重忠が馬を背負って降りる場面も挿絵のイメージとともに覚えている。名前はついていなかったように思う。日頃世話になっているからと、大将自ら馬を背負って崖を下りるのであるが、いくら大柄な人だったとしても、馬を背負うなんて、結構小さめの馬だったのかと思ったりした。競馬の様子を見ていると、とても騎手が馬を背負えるようには見えなかったからである。

それもそのはず。そもそも日本の在来馬は、今日私たちが見慣れている体格が良く、足の長い西洋のサラブレッド系ではなく、ずんぐりした、むしろロバに近いような品種なのである。

日本の馬は2000年程前に中国から渡ってきたといわれている。日本におけるサラブレッド型は明治以降の軍事用に改良されていったものであり、それまでの馬の姿は、在来馬と呼ばれる北海道の道産子や長野の木曽馬、宮崎の都井岬の御崎馬などに見ることが出来る。写真は御崎馬であるが、馬でもポニーを思わせるような小柄なものである。
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 都井岬の御崎馬

司馬遼太郎の「国盗り物語」で、斉藤義龍の体格が良すぎて、鎧を着込んで騎乗したところ、足が地面すれすれだった。。。ような場面があったと思うが、在来馬の体格が
大なり小なりこのようであれば、それもそうだろうな、と納得してしまう。しかし、足が細く長いため折れやすいという西洋馬に比べて、持久力と耐久力には優れていたようである。それはそうであろう、あの鎧、セットで着用すると総重量何キロになることやら。。。と思うが、ヨーロッパでの鎧も全身金属で覆われており、さらに金属製の槍だの、刀だの、楯だのを持った時には日本の鎧に負けず劣らずの重量になる、いや、もしかすると西洋の鎧の方が重くなるかも知れない。日本の鎧は基本皮だし。。。

去年パリに滞在した時のこと、7区にあるアンバリッドに行った。ここはるい14世が負傷兵のための軍事医療施設として建てたものであるが、今は軍事博物館となっている。大砲、甲冑、刀剣、銃剣、馬具など、コレクションがずらりと並びぶなかに、懐かしいものが目に入った。日本の鎧である。当世具足の類である。日本の鎧は大航海時代、結構海外に流れたようで、貴族の肖像画に小道具として描かれていたりもする。
ちなみに西洋の鎧も日本に渡ってきている。徳川家康所蔵の南蛮鎧などは好例である。

さて、そのうち、等身大の騎士が騎乗している像が並ぶ展示室へと続く。背の高い、がっしりしたサラブレッド種に堂々と騎乗する隙のない金属鎧の騎士は堂々として恰好いい。恰好いいが、こんなに身体を覆い尽くして実戦になるのだろうか。。。とは思う。さて、その中に我が日本の鎧を着用した像もあった。原寸大。。。馬もしっかり原寸大なのである。。。そんなに丁寧に再現してくれなくても、せっかくパリに渡ってきたんだから日本の鎧武者もサラブレッドに颯爽と乗せてやってくれ~と心の叫びをのこしながら。。。。
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大河ドラマ「風林火山」のオープニングで、馬が疾走する画面があったが、もしタイムスリップして実際の武田騎馬隊を見ることができたら。。。ずいぶん印象が違うことだろう。

大河ドラマ、武士、馬とくれば、「功名が辻」。妻、千代のへそくりで名馬を購入し、一躍出世の糸口をつかんだ山内一豊の話も武士と馬の密接な関わりを示すものである。馬は財産であり、ステイタスであった。現代で言えば乗用車と戦車の混ぜたようなものだろう。馬の能力は戦場での働きを大きく左右したのである。


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