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物語の真のヒーロー・狸 [十二類合戦絵巻]

この話の真の主人公は狸である。歌道に思い入れの深い、風雅を愛する狸。。。だが、その志は薬師如来の眷属である十二獣には受け入れられない。春日大社の鹿、稲荷の狐のような側面が狸には。。。。ないのである。
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十二獣への攻撃作戦中の狸軍。右の威勢のいいのは蓮台野の狼

狸は「他抜き」=他を抜く、からきているという。それなら勝負事の世界で崇められても良さそうなものだが、「他を出し抜く」といったマイナスイメージの小ずるいイメージのほうが大きいのかも知れない。

しかし、信楽のひょうきんな焼き物にも見られるように、狸は愛すべきキャラクターである。人間に内在する欲や、我、それに哀しいような滑稽さを託すのは、狸がもっとも激しているのかも知れない。

狸が援軍と頼む鳥獣、古狐、熊、狼、トビ、詐欺、梟、カラス、猫、てん、イタチ、ミミズクなどは、単純に小ずるさや獰猛さに徹しているような表情をしている。それなのに長である狸だけは、性格に正邪の幅があり間ぬけである。神獣と戦いという、だいそれた行動を起こすにも関わらずどこか人の良ささえかんじさせるものがある。
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これは、一旦敗戦して隠れている狸の所に、トビが夜襲を誘いにくる場面であるが、この狸の表情。ぽかんと口を開け、まるで人ごとのように聞いている。そのあと、結局夜襲にでかけるのだから、乗せられやすいというか、哀れというか、単純というか。。。

物語の面白さというのは、完璧なヒーローではなく、完全な悪者でもなく、その狭間を行ったり来たりの魅力的で優柔不断な脇役によって決定づけられる。そしてこの脇役はしばしば主役の座を乗っ取ってしまう。この狸はまさにそういうキャラクターなのだ。

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再び破れて後、狸は鬼に化け、十二獣をかみ殺しにいこうとする。。。これは水鏡で鬼になった姿を見ている所。水面にちゃんと反面の顔が写っている。。。

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腹鼓で念仏踊りをする狸。 戦ったことなどウソのような愉悦の表情である。

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