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牛のあれこれ 絵巻より [丑]

昔は牛の存在というものは現代とは比べ物にならない程大きかった。現在の私達の暮らしでは、牛というと牛肉、牛革(カバン、靴、小物等。。。)など、加工されたものばかりだから、直接に牛を見る機会はほとんどない。しかし、昔、牛は食糧ではなく、車、農耕車といった動力としての活動が主だったから、今、私達が通りに出て車を見ない方が難しいように、外へ出れば必ず牛とご対面の機会があったに違いない。
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春日権現験記絵より 牛飼童にひかれて行く牛 中におられるのは地蔵菩薩 
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北野天神縁起より 珍しく暴走する牛  菅公の怨霊に寄る賀茂川の氾濫の中を疾走する牛車 日本版モーセの十戒のような。。。乗っておられるのは尊意という高僧

牛車に乗られるのは、どうやら尊いかたばかりのよう。。。神仏、また神仏に準ずる方か、貴族、公家。。。武士が牛車に乗っている姿はないようである。。。もともと武士(もののふ)は侍(さぶろ)う者
=さむらい。。。

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平治物語絵巻より 上皇を護衛して移動する武士団

さて、これは地獄の様子を描いた場面 地獄にも牛車が。。。と思いきや、牛ではなく、象でした。。。
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北野天神絵巻より



物語の真のヒーロー・狸 [十二類合戦絵巻]

この話の真の主人公は狸である。歌道に思い入れの深い、風雅を愛する狸。。。だが、その志は薬師如来の眷属である十二獣には受け入れられない。春日大社の鹿、稲荷の狐のような側面が狸には。。。。ないのである。
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十二獣への攻撃作戦中の狸軍。右の威勢のいいのは蓮台野の狼

狸は「他抜き」=他を抜く、からきているという。それなら勝負事の世界で崇められても良さそうなものだが、「他を出し抜く」といったマイナスイメージの小ずるいイメージのほうが大きいのかも知れない。

しかし、信楽のひょうきんな焼き物にも見られるように、狸は愛すべきキャラクターである。人間に内在する欲や、我、それに哀しいような滑稽さを託すのは、狸がもっとも激しているのかも知れない。

狸が援軍と頼む鳥獣、古狐、熊、狼、トビ、詐欺、梟、カラス、猫、てん、イタチ、ミミズクなどは、単純に小ずるさや獰猛さに徹しているような表情をしている。それなのに長である狸だけは、性格に正邪の幅があり間ぬけである。神獣と戦いという、だいそれた行動を起こすにも関わらずどこか人の良ささえかんじさせるものがある。
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これは、一旦敗戦して隠れている狸の所に、トビが夜襲を誘いにくる場面であるが、この狸の表情。ぽかんと口を開け、まるで人ごとのように聞いている。そのあと、結局夜襲にでかけるのだから、乗せられやすいというか、哀れというか、単純というか。。。

物語の面白さというのは、完璧なヒーローではなく、完全な悪者でもなく、その狭間を行ったり来たりの魅力的で優柔不断な脇役によって決定づけられる。そしてこの脇役はしばしば主役の座を乗っ取ってしまう。この狸はまさにそういうキャラクターなのだ。

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再び破れて後、狸は鬼に化け、十二獣をかみ殺しにいこうとする。。。これは水鏡で鬼になった姿を見ている所。水面にちゃんと反面の顔が写っている。。。

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腹鼓で念仏踊りをする狸。 戦ったことなどウソのような愉悦の表情である。

歌会の歌 それぞれの表情 亥/猪 [十二類合戦絵巻]

亥/猪

しなかとりふす亥の床の山かせに
雲もさはらぬ月をみるかな

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狸軍に夜討ちをかけられた場面 腰の抜けた猪は馬に助け起こしてもらっている

猪の存在はなんだかぱっとしない。「猪突猛進」「猪武者」などというイメージにもかかわらず、絵巻の中では活躍がほとんど見られない。どちらかというと、のんびりした柔和な表情が印象的である。

歌会の歌 それぞれの表情 戌/犬 [十二類合戦絵巻]

戌/犬

さとの戌の月みる秋の夜半たにも
ほしまもるとや人のおもはむ

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鹿と狸に「異類の者は帰れ」と告げる犬

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狸の化けた鬼に吠えかかる犬

「十二類合戦絵巻」の中では、犬は鹿や狸を追い返そうとしたり、狸の正体を見破ったりと、狸の次に活躍している存在である。常に人間の側にいるという距離の近さが活躍の場につながっているのだろうか。

歌会の歌 それぞれの表情 酉/鳥 [十二類合戦絵巻]

酉/鳥

つれなしとゆふつけ酉のなくなへに
かけほのめかすあり明の月

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一枚目の歌会での穏やかな表情に比べて3枚目の狸を糾弾するときの陰険な目つきといったら。。。

歌会の歌 それぞれの表情 申/猿 [十二類合戦絵巻]

申/猿

月をのみみやまおろしはしくるとも
空くもら申秋の夜もかな

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狸軍との戦いで、前線で活躍するのは牛、馬、虎などの大型動物ではなく、猿、兎、鼠といった小動物である。宴の時に真っ赤な顔でへべれけになっている姿に比べて3枚目のりりしいこと。。。。

歌会の歌 それぞれの表情 未/羊 [十二類合戦絵巻]

未/羊

めくりきて月みる秋に又なりぬ
これや未のあゆみなるらむ

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羊というよりは山羊に見える。。。そもそも日本には羊は棲息せず、いたのは高地に住む羚羊(カモシカ)だった。。。モデルは羚羊。。。それならまだ分かる。。。。しかし日頃親しんでいないせいか、表情にあまり変化がなく、活躍ぶりも地味である。。。(しかしカモシカは実はウシ科である。ウシ科ヤギ亜科)

歌会の歌 それぞれの表情 午/馬 [十二類合戦絵巻]

午/馬

あふさかや關のこなたにまち出て
よるそこえぬるもち月の駒

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狸を蹴っている場面 かなり積極的に見える

詞は
       けふせてくれむ(蹴臥せてくれむ)   怖い怖い。。。。。
      

歌会の歌 それぞれの表情 巳/蛇 [十二類合戦絵巻]

巳/蛇

月巳れはうさもわするる秋の夜を
なかしとおもふ人やなからむ

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戦の場、野宿の場に蛇は鎧着用で登場していない。蛇は十二獣の中で唯一女性であるらしい。
一枚目は歌会、二枚目は宴の場である。一枚目は上衣を着ているが、二枚目「きぬうちぬきて」の略装である。
宴のでは 

         酒はひとくち
             のみぬいまは
                きぬうちぬきて
                      のひのひと
                           ねはや

とのたまう。やはり蛇は誘惑的な魔性の存在である。目つきも妙に色っぽい。しかし、この蛇、耳がついている気がするんだけど。。。

歌会の歌 それぞれの表情 辰/龍 [十二類合戦絵巻]

辰/龍

あまつ空うき辰雲もこころして
月をはらさぬよそのむら雨

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霊獣の威力と存在感はさすがである。。。堂々たる十二獣の頭。。。
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